世界自然遺産登録基準から考える知床の魅力と絶対に守ってほしいこと

知床観光の魅力を表現する時、世界自然遺産はもちろんのこと「最後の秘境」「自然が織りなす絶景」など、手つかずの美しい自然景観をイメージさせる言葉が多く使われています。

確かに知床は美しい自然が残されているので、そのように表現するのも間違ってはいません。

でも、知床が世界自然遺産に登録されている理由は、自然美や絶景を保存するためではないのです。

世界自然遺産の登録基準は4つあります

現在、日本で世界自然遺産に登録されているのは、屋久島、白神山地、知床、小笠原諸島の4箇所。
それぞれ貴重な自然が残されていて「顕著な普遍的価値」を有する地域として認められたわけです。

世界自然遺産に登録されるには、4つの評価基準の一つ以上に適合していなくてはなりません。その4つの評価基準がこれです。

  1.   最上級の自然現象、又は、類まれな自然美・美的価値を有する地域を包含する。
  2.  生命進化の記録や、地形形成における重要な進行中の地質学的過程、あるいは重要な地形学的又は自然地理学的特徴といった、地球の歴史の主要な段階を代表する顕著な見本である。
  3.   陸上・淡水域・沿岸・海洋の生態系や動植物群集の進化、発展において、重要な進行中の生態学的過程又は生物学的過程を代表する顕著な見本である。
  4.  学術上又は保全上顕著な普遍的価値を有する絶滅のおそれのある種の生息地など、生物多様性の生息域内保全にとって最も重要な自然の生息地を包含する。

 なんだか難しそうな言葉が並んでいますが、簡単に言うと「1.自然美」「2.地形・地質」「3.生態系」「4.生物多様性」の4つです。

日本の世界自然遺産はどの基準に適合してるのか

それじゃ日本の世界自然遺産は、この4つのどれに適合しているかと言えば、こうなっています。

屋久島=「自然美」「生態系」

白神山地=「生態系」

知床=「生態系」「生物多様性」

小笠原諸島=「生態系」

いずれも「生態系」に適合していますが、「自然美」は屋久島のみ、そして知床は「生物多様性」に適合しているのです。

知床の本当の魅力は「生物多様性」だった

知床の本当の魅力は、美しい自然景観や絶景ではなくて「生物多様性」だったのです。

ちなみに、知床の世界自然遺産登録区域はこうなっています。


 出典:知床国立公園ガイドブック(環境省)

世界自然遺産は、陸域と海域が一体として登録されています。

知床は陸の生態系と海の生態系の相互関係が自然のまま保たれていて、そこには多様な生物の生息域があるこということですね。

そして、この地図見て何か気付きませんか?

知床は国立公園になっているのですが、国立公園よりも世界自然遺産地域の方が広くなっています。国立公園の広さは、世界遺産地域の約86%だそうです。

世界自然遺産地域には、人間の生息域(生活圏)も含まれています。

知床観光で生物多様性が体感できる

知床に来れば、様々な動物たちに出会えます。

出典:日本の世界自然遺産(環境省)

陸の動物は、けっこう簡単に出会えます、というか出会っちゃいます。

道路の脇にヒグマがいたりしますし、エゾシカは生態系を壊すのではないかと心配するほどいます。

秋になると、ヒグマが鮭を捕まえる光景も見ることができます。

流氷時期にはオオワシやオジロワシがたくさんやってきますし、夏にはクジラやイルカが目の前で泳ぎます。

知床はマッコウクジラも見ることできるんですよ。もちろん船に乗ってですけどね。

海洋生物では、いまトドが厄介者扱いされていますね。漁で仕掛けた網にかかった魚を食い荒らすらしく、漁業者は頭抱えているようです。

動物たちだけじゃなくて、希少な植物もたくさんあります。

動物たちとの出会い体験企画はたくさんあるので、「知床動物ウォッチング」とかで検索してみてください。

ただし、これだけは絶対に守ってください

知床は、生態系や生物多様性を保存していかなければいけない地域です。

知床には10の約束というのがあります。ツアー会社や現地ガイドからも聞かされると思いますが、これだけは絶対に守ってくださいね。

-知床 10の約束- 

1.野生動物に食べ物を与えない

 自然の生態系を乱すだけでなく、人に近寄るヒグマを創り出したり、キツネの交通事故を誘発するなど、人と野生動物の双方に不幸な結果をもたらします。

2.道を外れて歩かない

 歩道や木道を外れて歩き回ると道に迷うなど危険なだけでなく、植物が踏み荒らされたり、土が削られたりします。

3.動植物をとらない、脅かさない、傷つけない持ち込まない

 繊細な自然は、小さな行為でも大きな影響を受けます。

4.ゴミは持ち帰る

 景観や野生動物に影響を及ぼし、ヒグマを誘引するおそれもあります。

5.ペットを外に連れて歩かない

 ヒグマを刺激してしまうおそれがあります。

6.遊歩道上での食べ歩きや野外での調理は行わない

 食べこぼしや食べ物のにおいはヒグマやキツネなどを引き寄せる原因になります。

7.ヒグマに出会わないようにする

 ヒグマに対する私たちの行動次第で、危険な状況になることがあります。出会わないようにすることが一番の安全対策です。

8.ヒグマに近づかない、刺激しない

 自分が危険なだけでなく、人の接近に慣れすぎたヒグマはトラブルを起こすようになってしまう場合があります。

9.車のスピードは控えめに

 野生動物が飛び出してきます。大きな事故にもつながります。

10.漁業活動を妨げない

 地域の人々の生活を支えています。